花日記
───
「もう朝ですよ!
起きてください!」
朝?
俺は聞き慣れない女の声で目を覚ました。
おかしいな。
昨日は珍しく色街にも行ってないはずだし、夜這いもかけてねぇ。
じゃあ、この女の声は誰のだ?
目を開けると、やっぱり御所の中の俺の部屋。
そんで、見慣れない女。
誰だっけ?
俺はしばらく考えてやっと思い出した。
あの天狗の女か。
「何だ?」
「あ、えっと、昨日のお礼を言いにきたんです。
ありがとうございました。」
「別にいい。」
着物を着替え袿を着た女は思ったより美人だった。
「あの、答えたくなかったら答えなくて良いんですけど、貴方は本当に誰ですか?」
「答えたくないな。
何故そんなことを聞く。」
「だってこのお屋敷、とっても広いし。
この着物だって凄く着心地が良いし、お琴さんが出してくれた食事もとっても豪華だったから、申し訳なくて…」
申し訳ないなんて言った奴は初めてだな。
「構わねえ。」
「でも…。」
「お前こそ誰だ?
あんな変な着物、見たことねえ。」
俺は思い切って聞いてみた。