花日記
綾子のその表情がどうしても面白かったが、クソオヤジの手前、笑うのは必死で堪えた。
そしていつの間にかクソオヤジは侍女や小姓やら奉公人をわんさか呼んで、綾子の部屋の準備に取り掛かっている。
その指示を出してすぐまた俺の所に来て、
「公方様、忘れる所でした。
さ、朝の会議に!」
と、俺を連行しようとしたが、
「あ、あの…!」
綾子の声で俺等は足を止めた。
「何だ。」
「私はどうすれば…?」
「ああ、昨日の侍女とかそこらの奴がお前の世話をしてくれる。
お前は好きなようにしていていい。」
「…そうですか。
わかりました。」
「また後で、な。
綾子。」
こうして俺はまた朝の会議に引きずり出された。
俺が部屋を出た時、綾子の顔が若干赤かった気がしたが、気のせいだろう。