花日記
*六百年
政をなんとか片付けて、俺は綾子に宛がった部屋にそのまま向かった。
部屋に付き、周りに奉公人が居ないのを良いことにこっそり覗いてみる。
俺、変態みたいだな。
まあ、今更か。
しかし、これでも夜這いでないのに女の部屋を覗くのは初めてだ。
…何の弁解にもならないか。
中には綾子しかおらず、侍女は下がらせているようだ。
綾子は何か色とりどりの書物を読んでいた。
綺麗な紙だ。
絵巻か?
女は好きだからな、源氏物語とか。
俺は覗くのを止め、部屋に入った。
「あっ…」
綾子はそそくさと書物を隠し、俺の方を見る。
「どうだ、この部屋は?」
俺は書物が気になったが、何食わぬ顔で問い掛けた。
「はい、とっても豪華で…。
やっぱり申し訳ないです。」
「良いと言っている。
お前は俺の側室の扱いだ。
好きなようにすればいい。」
「…はい。」
側室、か。
好きなようにすればいいなんて、今までどの女にも言ったことはない。
面倒で、金銀財宝や権力にしか興味のない女たち。
そいつらにいい思いなんかさせたくなかった。