花日記
「他にも何かあるな。」
この本だけとは思えない。
「ありますけど…。」
やはりな。
「見たい。」
短く言うと、綾子は困ったような顔をした。
「駄目か…?」
顔を近づかせながら問う。
案の定、綾子はタコみたいに顔を真っ赤にする。
これでも容姿には自信がある。
俺で数えて五代目、醜男だったらしい尊氏爺さんの血より、美人だった将軍生母達の血の方が濃い。
「駄目…。」
綾子は小さな声で拒否する。
「何故だ。」
俺は気にせず続けた。
「もしも、今私がいるのが、私からみて本当に過去だとしたら、貴方に私の持っている物や私の知っている歴史を教えるべきではないと思うんです。
貴方にとってはまだ真っ白な未来だから…。」
「……お前は、優しいのだな。」
歴史なんてそう簡単に変わらないだろう。
俺がこの後どうなるか、綾子は知っているはずだ。
名を、残さないと。
それでも、真っ白な未来と言ってくれた。
「わかった。
歴史は…未来は聞かない。
だが、他にも何かあるんだろ。
興味がある。
見せろ。」
どうしても好奇心が勝る。
綾子はやはり困っている。
「なら…。」
俺がなかなか引かないからか、綾子は折れて、奥からあの妙な形の荷を持ってきた。