花日記
二人が一言二言言葉を交わしたあと、葛桐とあの白拍子は交代して、葛桐はそのまま畠山につき、あの白拍子はこっちにやって来る。
それを見ていた畠山が意味深なニヤニヤ顔でこっちを見てくる。
俺は畠山を睨み、一度も箸をつけていなかった膳に手を伸ばした。
「…あの。」
「どうした。」
「確か昨晩、街で…」
「っ…!
ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ…!!」
食べていた干し鮑が喉に詰まってむせ返る。
「公方様っ!」
白拍子は慌てて背中を摩ってくれた。
「大丈夫にございますか?」
「大丈夫だ。
礼をいうぞ。」
「いえ。」
白拍子は軽く微笑む。
その笑顔がとても綺麗に見えて、思わず凝視する。
目と目が合い、白拍子はさっと顔を背けた。
頬はほんのりと赤い。
俺は俺で、早まる鼓動の音がが煩く、手は少し湿っていた。