花日記
そのままの姿勢でまた星を眺める。
しばらく経つと顔を伏せていた夕凪も、星を見ようと顔を上げた。
「綺麗…」
一面の星空を見てそう呟いた夕凪を、純粋に可愛いと思う。
「星というものは、こうして見ているだけならば近くにあるように感じますのに、本当はとてもとても遠い空の彼方にあるのですね…」
「…そうだな。
近いようで、遠い。
まるで…」
未来のようだ。
一日、一日はあんなに短いのに、それが積み重ねられた膨大な時の流れの先は遥か遠くにある。
綾子のいた六百年先の未来は、遥か遠くにある。
俺の知りようのないそれは。
「…冷えてきたな。
中へ入ろう。」
すっと立ち上がって襖を開け、部屋に入る。
夕凪も続いて部屋に入ろうとしたが、ピタリと足を止めた。
部屋の奥には、ご丁寧にも二人分の褥。
夕凪の身体が少し震えている。
俺は気付かないふりをしてまっすぐに褥に向かって歩き、そのまま褥の片方に寝転がる。
「どうした、来ないのか?」
わざと意地悪をして聞いてみる。
夕凪はおどおどと褥まで来て、ちょこんと正座した。