花日記
──ザーッ。
「ん、雨か…?」
雨の音で目が覚め、瞼を開くともう明るくなっていた。
そして、いつもより褥が温かいのを感じ、未だ俺の腕の中で眠っているその暖かさの原因に気づく。
いかにも安心しきっているその顔に、思わず頬が緩む。
「公方様、朝でございます。
お目覚め下さいませ。」
部屋の外から成兼が声をかけてきた。
「もう起きている。
だが、まだ来るな。」
ぐっすり眠ってる夕凪を起こすのは、何だか後ろめたい。
「……。
──承知致しました。」
かなり間が空いてから返事が返ってきた。
あいつめ、絶対笑いやがったな。
「チッ…」
にやけた顔の成兼を想像して、妙に腹立たしくなって舌打ちする。
「んにゃ…」
可愛い声が聞こえ、腕の中のが少し動いた。
「んー…」
寝ぼけているのか、目を開けたあともくねくねと動いている。
「朝だ。」
俺がそう言った瞬間、半開きだった大きな目がパッチリと開いて小さな身体がビクンと跳ねた。
「公方様っ…!」
「良く眠っていたな。」
「も、申し訳ございませ………って、きゃあっ…!」
俺に抱きしめられているのに気付き、悲鳴が上がる。