花日記

日が沈み、一人酒を呑む。



最近、色街に出掛けなくなった。



行っても、つまらないのだ。



前は女を抱いて憂さを晴らしていたが、今は女を抱くことのほうが憂さとなっている。



空を眺めながらの一人酒も、なかなかのものだと感じる。



ザアッと強い風が吹き、それを感じながら目を閉じた。



「誰だ。」



風が通り過ぎると同時に、人の気配がした。



そっと振り返ると、そこにいたのは真っ白な寝巻に身を包んだ綾子だった。



綾子は一瞬、ビクッとする。



「な、なんで…?」



「は?」



「あなた、確かに後ろを向いていたわ!
なのに、なんで私が来たのがわかったの!?」



「俺は、人の気配に敏感なだけだ。」



「へ、へえ…。
そうなの…。」



「何だそれは。
それより、何故ここにいる。
よりによって、そのような格好で。」



「そ、それは…」



「それは?」



「日向くんがどうしてもって言うから…!」



「正家が?」



またあいつ、余計なことを!!!



「寝るぞ。」



「え?」



「俺はお前に手を出す気はない。
俺の気が変わらない内に寝る。」



「は、はい。」



俺は奥に入り、綾子も俺について来る。



いつの間にか二組になった隣り合う褥に、心臓がはねるのを感じながら、眠りについた。


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