花日記
部屋の中には、成兼か正家、もしかしたら綾子がいるのではないかと踏んではいたが、案の定、居た。
「く〜ぼ〜う〜さ〜ま〜っ!!!!」
赤ら様に怒っている、正家が。
「また勝手に御所を抜け出してしまわれて!!!
私と兄上が、大御所様にあなた様のいどころを隠すのに、どれだけ冷や汗をかいたことか!!!
いいえ、それだけではござりませぬ!
此度の件でどれだけ姫が…」
「あぁ、もうわかったわかった!
うるさい!」
可愛い顔をぐしゃぐしゃにして怒っている正家の相手をするのは、心底疲れる。
それに、何故か夕凪の前で綾子の話をされたくなかった。
瓜二つの二人を、関われせたくないという、俺の勝手な思いから。
「いいえ、嫌にございます!
もう我慢なりせぬ!!」
正家は、くわいっと俺ににじり寄る。
まずい、かもな…。
「それに、このおなごは何者にございますか!?
まさか、街で気に入られたおなごを連れ帰って妾にされるおつもりか!?」