花日記
この間、夕凪はただ顔を伏せるのみだった。
俺のせいで、不愉快で、この上なく身の不確かさを味わされている。
やはり、どこか後ろめたくなる。
「公方様がそれをお望みならば、私には申せることはございません。
そのものの室を用意してまいります。」
正家はそう言い、この時始めて夕凪の顔をみた。
「っ!?
ひ、姫…?」
綾子と瓜二つの夕凪に、隠すこと無く動揺している。
夕凪は、何のことか首をかしげているが。
「く、公方様…。
これは、一体どういうことで…」
正家は、さっきまでと打って変わってぐらぐらに揺れている。
俺は、ため息をひとつついて、成兼を呼びにいかせた。