花日記

朝餉を食べながら、夢の中の世界について考える。




あの世界が、ただの夢に思えなくて。



いや、俺ははっきりとあの世界が未来であると、何処か確信めいたものを持っている。




きっと、綾子がそこにいたから。




薄墨色の世界は、夢などではないのだと、感じている。



「公方様、粥が…」




ぼとり、と匙から粥が溢れた。




正家がすぐさま着物を拭いてくれる。




「大事ございませんか?」




また、心配そうな顔を浮かべる正家。




どうやら、俺の体調を考えて朝餉をいつもの食事から粥にしたのも正家のようだ。




「また、どこかお悪いのでは!?」




正家が声をあげる。



「いや、大丈夫だ。」




「されど!」




「本当だ。」




「いえ、いくら公方様といえど、捨て置けませぬ!
この日向、十五のときに公方様がそう言って無理を重ねて倒れられたことを、忘れてはおりませぬ!!」




ギロリと正家が目を光らせた。



まずい!





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