花日記

ふと、今日の夢のことを思い出した。



薄墨色の銀色の世界のことを。



思い出したら、綾子に会いたくてたまらなくなる。



夢の中で届かなかったもどかしさを孕んで。



退屈凌ぎには丁度いいかもしれない。




「日向。」



正家に声を掛けると、正家は慌ててそば近くまで寄ってきた。




「はっ!
何かございますか!
まさか、お苦しいので!?」




大げさに騒ぐ正家にまた呆れながら、綾子を呼んでくるように命じた。



本当に、あいつのことを暑苦しくなく感じるその顔に感心する。



絶対に、正家は顔で得してる。




正家が部屋を出たことで、成兼と二人きりになった。



「成兼、綾子が来たら、人払いをしろ。」



「はあ?」



綾子とこれから話したいことは、恐らく俺以外が知らない方がいい事だ。



薄墨色の世界の、話なのだから。



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