花日記

「わかった、俺が次の間で控えているのであれば良いだろう。
次の間なら、すぐに公方様を護れる。
そうでないなら、姫には部屋に戻ってもらう、良いな。」



「わかった。
ただし、お前以外は決してここへは近づけるな。
日向もだ。」



あの世界のことなど、知るべきではない。




いや、教えたくない。



誰にも、俺が心から信頼している、この2人にさえも。



「わかった。」



成兼がそう言うと、正家が綾子を連れて来た。


綾子は、薄紅の袿を着た姿で心配そうな表情を浮かべて正家の後ろに立っている。



大方、正家が俺が倒れた!と言って来たのだろう。




当の本人である俺は、身体の調子が悪くなどないのに、心配そうな顔をされるとどうして良いものかと少し心が痛んだ。




「日向、ご苦労だった。
退がってくれ。」



「え、公方様!?」



「次の間に伊予が控える他は、誰もここへは近づけるな。
わかったな。」



「いえ、しかし!」



「日向、公方様の命だ。
暫く退がっていろ。」



成兼が少し強く言うと、正家は渋々部屋を後にした。



成兼はそれを確認すると、部屋を出て襖を閉めた。



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