青騒-I SAY LOVE-
「―――…ったく、あんの調子ノリ畜生。弄るだけ弄って逃げやがってからにもう。次、会ったらどーしてくれよう」
ガツガツとハンバーガーに齧り付いているケイさんは、ちょっと不機嫌そう。
というより、ちょっと拗ねた子供のよう。
脹れている顔が幼い。それを見て思わず一笑しそうになるんだけど、笑ったらケイさん、絶対に機嫌を損ねるだろうから何も言わないでおくことにしよう。
「あのドスケベめ」
舌を鳴らすケイさんの言葉に、私は思わず自分の目に視線を落とす。
そして盛大に溜息。ケンさんに二回も胸を熟視されちゃったんだけど。胸ぺったんこ、私にとってはコンプレックスの塊でしかない。
だってAカップ、まな板だもん。
周りの女の子はどんどん胸が実っているのにっ、弥生ちゃんとか、響子さんとか、平均並みなのに、私は平均以下。
私のトラウマだった古渡さんなんて巨乳。
少しくらい分けてくれたって良いんじゃ…、って思うくらいの大きさだったなぁ。
曰く、ケンさんは貧乳スキーさんらしいけど、私としてはもうちょっとおっきくなって欲しい切な気持ち。
私だって女の子ですもん、胸、Bくらいありたいじゃないですか!
ぱ、パットで胸を作るなんて虚しいじゃないですかっ!
胸がおっきい子曰く、「胸が大きいと肩が凝りやすくて」らしいけど、私にはその肩こりの原因さえないんですけど!
ううっ、海とか行っても水着とか、ビキニとか絶対着れない。
今のままの胸じゃっ、今の胸のままじゃっ…、ガッデムです。
……男の子って胸がある女の子の方がやっぱり、う、嬉しかったりするんだよね。ケイさんもそうなのかな。
私は不機嫌にハンバーガーを噛み締めているケイさんをジトーッと見つめた。見つめ続けた。
視線に気付いたケイさんはコロッと表情を変えて、「どうした?」言葉を掛けてくれるけど、私の口から出るのは溜息ばかり。
どうして私の胸、ちっちゃいんだろう。悩みの種だ。
ガックシ肩を落とす私に、「ココロ?」マジでどうしたよ、ケイさんが優しく声を掛けてくれる。その優しさが辛いです、ケイさん。
長く深い溜息をつく私に、「まさか」ケイさんが血相を変えた。