青騒-I SAY LOVE-



こうなったらもう、有り難く頂くしかないよね。


羞恥心を抱きながら、私は器を受け取り、お弁当箱を彼に差し出した。


……こういう食べ合いに嫌悪感を持つ人もいるけど、私、基本的に気にしない。うん、シズさんとはお友達だもの。
 

「…煮物」


シズさんが物欲しそうに大根の煮物を視界に入れてるものだから、私はそれもどうぞ、と彼におかずを一品恵んであげることにした。

すると嬉しそうにシズさん、大根の煮物を手で抓んで口に放り込む。


「ウマイ」


子供のように純粋に、そして幸せそうに綻ぶシズさんを見てると、微笑ましい気持ちになってくる。
母性本能が擽られるってヤツかな。
 


「ずっと…、コンビニ弁とかだから…、こういう料理、久しい。煮物、もっと食べたい」
 


ポツリと零すシズさんの一台詞。
 
響子さんから聞いた話、シズさんの家庭はとても複雑なんだって。

あんまり両親の愛情を受けていないとかなんとか。


詳しいことは聞けてないけど、しょっちゅう外泊を繰り返しているんだって。

それはグループ内にいるヨウさんも同じ。



家庭がとてもとても複雑、だとか。



私は両親を亡くしている身の上、両親がいる家庭が羨ましかったりするのだけれど、両親がいたらいたで大変なんだなぁ。
 


「じゃあ今度、シズさんにお弁当作ってきましょうか? 煮物料理、大得意なんですよ」



途端にシズさんの目が爛々輝いた。
 
「真の友達」ワケの分からないことを言って、私の頭を撫でてきてくれる。

……シズさんって基本的に食べ物でお友達になれそう。

うん、食べ物で釣られそうなタイプ。

しっかりしているんだけど、ちょっとこういう面を見ていると憂慮を抱いたり抱かなかったり。


約束だと笑顔を作るシズさんにコックリと頷いてみせる。
やっぱりこういう子供っぽい笑顔を見ているシズさんを見ていると、微笑ましくなる。

身長高いシズさんの頭を撫でたくなるというか。
< 108 / 322 >

この作品をシェア

pagetop