青騒-I SAY LOVE-
「気にしてませんよ」
ケイさんは愛想笑いでそれを受け取っていた。
うん、その愛想笑い、絶対に気にしてる顔だよね、ケイさん。
顔に書いてありますもん。
『ちーっとも気にしてますよ』って。
「あー…それで? 響子さんの背中に隠れてる子と、俺、お話できそうですか? あからさま避けられてる感あるんですけど」
響子さんの向こう、つまり私を指差してくるケイさん。
ビクッと肩を震わせた私はそろそろーっと顔を出して、彼と視線がかち合って、素早く背中に隠れなおした。
無理です、今は無理です。
顔合わせも何も出来ませんから!
テンパっていたとはいえ、あ、あああんなことをケイさんに吐き捨ててしまうなんてっ!
小っ恥ずかしくて顔合わせできない! 直視も無理!
「コーコロ」響子さんに名前を呼ばれても、私はかぶりを左右にブンブン。
ましてやケイさんに名前を呼ばれたら、身がギュッと小さくなってしまった。筋肉も縮こまってしまう。
「おいおいココロ。
恥ずかしいこと言ったのは分かるけど、ケイに会いたがってただろ。言葉のアヤってヤツでケイも笑って流してくれるって。な?」
「(こうなったのは響子さんのせいなんですが!)
は、ははっ。そうだよ、ココロ。別に俺、気にしてないからさ」
なんだか今、ケイさんの心の声が聞こえたような気がする。気のせい?
私はおずおず響子さんの背中から顔を出すことにした。
同時に、
「ケーイさぁああん!」
嬉々溢れた声が出入り口から飛んで来た。
この声は謂わずもケイさんの弟分キヨタさんだ。
ケイさんと同じ色に染めた黒髪を靡かせて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら大きく手を振って猪突猛進してくる。
向こうではモトさんがヨウさんに挨拶するために駆けていた。
中学生組は本当に揃って舎兄弟が好きなんですね。微笑ましい。
キヨタさんはぶつかるんじゃないかってほどケイさんに向かって全力疾走、どうにか急ブレーキをすると爛々とした目を兄分に向けて、
「こんにちはっス!」
今日も男前ですね、親指を立てていた。