青騒-I SAY LOVE-


質問に即答してくれたのは弥生ちゃん。


ゲームセンターが異様に暑く感じたから、飲み物を買って外で飲んでいたそうな。

隣で肩を並べるケイさんは付き添い。
弥生ちゃんから誘われて外で一緒に駄弁っていたみたい。

片手にはコーラが入ってあるであろう缶が。

簡略すると暑かったから外に出て飲み物を飲みながら駄弁っていた、たったそれだけのことなのに酷く狼狽している私がいる。

勿論表に出すことは無いけど、なんだかモヤモヤ。
どうしてこんなにも動揺してるんだろう、私。


気持ち悪い胸の疼きにこっそり眉根を寄せていると、「んじゃ俺は中に入るな」ケイさんが席を外すと発言。


ケイさん、多分女子同士の方が話し易いって気遣ってくれたんだと思う。


「ごゆっくり」


手をヒラヒラ振って、缶を片手にゲームセンターの自動扉を潜ってしまおうとする。

「あ、」私は思わず声を漏らした。
ケイさんに用事があったのに、このままじゃあ私、何も聞けずに終わってしまう。

「ん?」私の声を聞き取ったのか、「どうした?」立ち止まって視線を投げてくれる彼。慌てて私は何でもないと愛想笑いを零した。


ううっ、私のヘタレ。

気さくにお弁当のおかずの話を出せばいいのにっ…、ケイさんの好みだって分かるかもしれないのに。
会話だって、できるかもしれないのに。
 

自己嫌悪に陥っていると、放物線を描くように私の頭上を缶が通り過ぎた。
その缶はケイさんに向かって行き、そのまま彼がキャッチ。

「捨てといて」

缶を投げた犯人の弥生ちゃんがおどけ口調でケイさんに雑用を押し付ける。

「それくらい自分でしてくれよ」

俺はパシリですか、そーですか、ブツクサ文句を垂れつつ、二つ返事。今度こそ自動扉を潜ってしまう。
 
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