青騒-I SAY LOVE-
途端にケイさんは引き攣り笑いでキヨタさんの両肩に手を置く。
「キヨタくんキヨタくん。挨拶は嬉しいけど、色眼鏡で俺を見るのはちょーっと」
「色眼鏡? グラサンのことっスか!」
確かにサングラスは色眼鏡とも言いますがこの場合、意味が違います。キヨタさん。
意気揚々と答えるキヨタさんにケイさんはホトホト困った、でも仕方が無さそうに笑って「今日も元気だな」背中を叩いていた。
何気ないやり取りの一部だけど、私にとってこのやり取りはいつ見ても尊敬するやり取りだと思う。
だってケイさん、人種の違うキヨタさんとこんなに和気藹々と…。
「ケーイ、ちょいコンビニ付き合ってくれ」
「付き合えじゃなくて、チャリを出して欲しいんだろ? ヨウ。いいよ、ちょい待っててくれ。
悪い、ココロ。呼ばれちまったから、また後でな」
今からコンビニに行って来るよ、戻って来たらゆっくり話そう。
微笑を向けて踵返すケイさんは颯爽と自転車を取りに倉庫裏へと向かった。
「いってらっしゃーい!」
キヨタさんの元気な声をBGMに私はケイさんの背中を恍惚に見送る。
何度も瞬きしてケイさんを視界に捉えた。
倉庫裏にとめていた自転車に跨ってペダルを踏む彼は、当たり前のように舎兄を後ろに乗せて、風と一緒に出入り口に向かう。
二人乗りする舎兄弟の姿は私の携帯のフォルダに保存している画像そのもの。大好きな光景の一シーンだった。
出て行く際、ケイさんがこっちに向かって軽く手を振ってきてくれる。
思わず響子さんの背中を飛び出して、小さく手を振り返した。
目で笑うケイさんは、舎兄と一緒に自転車でコンビニに向かって行ってしまう。
一連の流れに胸が熱くなるのは、どうしてだろう。
あったかい気持ちに包まれながら、私は気持ちを改めなおした。
恥ずかしい恥ずかしいと思って逃げるの、もうやめよう。
済んだことなんだし、ケイさんもきっと分かってくれてるだろうから…、折角のお喋りできる時間を自分から潰してしまうなんて勿体無いこと極まりない。
うん、戻って来たら一言お詫びして、今日一日の学校生活を聞こう話そう語ろう。