青騒-I SAY LOVE-
「あーらら。ケイ、行っちゃったね」
と、背後から声を掛けられる。
振り返れば弥生ちゃんがニッコニコとしながら私に声を掛けてきた。
「すぐに戻って来るよ」
気遣いの言葉を掛けてくれる弥生ちゃん。
「ケイって結構ご多忙の身だから、ちゃーんと捕まえとかないと。なにせヨウの舎弟なんだしね」
「はい、本当に。だけど舎弟として頑張ってるケイさん、凄く素敵だと思います」
「ノロケ?」弥生ちゃんに茶化されて頬を赤く染めた。
恥ずかしいけどご尤もです。ちょっと惚気てみました。
だって本当のことなんだし、凄く素敵で努力家なんだって私自身そう思ってるから。
一方でちょっとだけ寂しかったりするのも本音。
舎弟として頑張っているのはいいんだけれど、舎弟だから舎兄や他の男友達とよく絡むのも分かるんだけれど、もう少し彼との時間を持ちたいと思う我が儘な私もいる。
他校同士だからかもしれない。
弥生ちゃんのように、ハジメさんと同校生だったら、きっと我が儘も些少ならず霧散されるに違いない。
本当は私、心のどこかで舎兄弟関係を羨ましいと思っていたりいなかったり。
だってヨウさんとケイさんの間には見えない、だけど確かな絆がある。
傍から見ても分かる絆がある。
じゃあ私達は?
……なんてちょっと僻む気持ちもあったりなかったり。
分かってるんだけどなぁ、ケイさんがヨウさんの舎弟で頑張ってること。
見合うような舎弟になろうと努力してること。
私はその舎弟の彼女として努力していかないといけないのに…。
べつにケイさんが彼女を蔑ろにしているとかじゃないから、単に私の我が儘だから…、この気持ちに収拾がつかなくて困る。
葛藤する気持ちに唇を尖らせて悶々していたら、「百面相になってっぞ」響子さんに表情を指摘された。