青騒-I SAY LOVE-


「お父さん、お母さんが傍に居てくれたら…、二人の恋愛話も聞けたのかな」
 

どこでどうやって知り合ったの?
どっちが先に告白したの?
馴れ初めってどんな感じだった? 

湧き水のように出てくる疑問を必死に抑え込んで、

「好きな人が出来るだけでも進歩だよね」

小中時代に比べたら、格段に私は成長したと思う。
うじうじしていたあの頃よりかは、まだ恋をしている自分の方がマシだと思えるから。
 


だけど、自分の感情に気付いてもこの恋は片恋で終わるんだと思っている。
 


ケイさんの様子を見ていると、彼は弥生ちゃんのような明るくてお喋りが大好きな、場を盛り上げられる女の子が好きみたいだから。

弥生ちゃんも、初対面ながらケイさんに助けられたってことで好感度は高い。

好きな相手はハジメさんに違いないんだろうけれど。


私なんかが好きです、なんて言ったら向こうだって困っちゃうよね。
分かってるんだ。


でも、でもね、お父さん、お母さん。



「誰を見ていても、相手を想うくらいは許してくれるよね?」
 
 

私はポケットに仕舞っていた携帯を取り出して、さっき届いたメールを再度黙読。

短い文字の羅列がディスプレイに映し出されている。
画面上の文字の色形は味気ないけれど、送り主の名前を見るだけで胸が熱くなった。


恋心のせいかな。
  


「私も強く…、なりたいな。何があっても、笑って乗り切れる彼のように」
  
 

私の独り言は仏間の静寂に溶け消えていった。
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