青騒-I SAY LOVE-
以降、私はケイさんへの恋心を自覚、それを受け入れて毎日を過ごしていた。
だからと言って、弥生ちゃんみたいに行動するわけでなく(弥生ちゃんみたいに積極的に話すなんてできない)、こっそりと彼のことを想うだけの日々が続く。
私の気持ちを察している弥生ちゃんや響子さんは、なにかと協力してくれるような素振りを見せてくれたけど、やんわりと私がそれを受け流したから。
片恋を抱くだけでも私自身、シアワセだった。
これまでにない新たな気持ちを知れた発見と新鮮さ、同時に広がる世界観。
嬉しいことばかりじゃないけれど、例えば彼と一言二言会話するだけで、その日の気持ちの上がりようは尋常じゃなく、明日も頑張ろうという気持ちにさせてくれた。
気さくに話しかけてくれる彼の背を見守る、それだけで私は十分だったんだ。
仮に彼が誰を見ていても、私は彼の傍で“良きお友達”でいよう。
この気持ちだけは絶対に彼には告げないと決心していた。
片隅で気持ちを告げることに怖じていたのかもしれないけれど、この気持ちだけは絶対に。
「弥生っ! 俺の携帯、勝手に弄っただろ! 待ち受けがめっちゃ乙女になってるんだけど!」
「弄ったんじゃなくて、デコレートしてあげたんだって。ケイの待ち受け、地味過ぎ」
「ありえねぇ!」
「可愛いじゃん」
他愛もないやり取りを、UFOキャッチャー前でしている彼等を遠巻きに見ていた私は苦笑し、踵返してその場を後にした。
彼が誰を見ているのか、なんとなく分かっている。
だからこそ、この気持ちだけは絶対に告げない。
彼には絶対に告げちゃ駄目なんだ。
告げたらきっと、私は大好きな人の顔を困らせてしまうのだから(それだけは絶対にやってはいけないんだ)。
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