青騒-I SAY LOVE-
照れ隠しなんだって分かってる。
俺は響子さんに一笑すると、今度こそヨウの下に駆けた。
舎兄の後ろからひょっこりとココロが顔を出したけど、ココロは俺と入れ違いに響子さんの下に行くみたい。
駆け足で彼女の下に向かっている。
擦れ違い際、俺は彼女を盗み見、んでもってヨウと肩を並べた。
ヨウを直視すると、片隅で不貞腐れる俺がいたりいなかったり。しょーがないだろ、あんな光景を目の当たりにしたら拗ねちまうって。
こういう時だけはすこぶる察しが良いヨウだから、「どうした?」なんか悩みでもあるのか? 真摯に心配を向けてきてくれる。
やめてくれよ、ヨウ。
お前にコノヤロウのドチクショウって嫉妬心を向けてたのに、そいういう風に心配を向けられたら俺の立場なくなっちまうよ。
とか、言えるわけもなく。
「んーんー、悩みっつー悩みはない。あるとすれば明日の英語の宿題くらい…、ゲッ、数学もあった気がする。
うわぁ、やりたくねぇや。てか、ヨウ、行くんだろ? 駅前まで偵察に」
二つ返事で肯定してくるヨウは、「んじゃ行くか」チャリに向かって前進。俺も倣って前進。
内心では気付かれないよう、必死に平然を装おうと努めていた。醜くも残念な嫉妬心を向けている俺を必死に隠していた―――…。
(―――…若かったねぇ、あの頃の俺)
ヨウにめっちゃ嫉妬していた頃を思い出して、ついつい苦笑い。
あの時は全然余裕がちっともなかったんだよな。
あんなに良きお友達でいることが、お互いのためとか自分に言い聞かせてたのに…、気持ちは反比例。
否定すればするほど、隠そうとすればするほど俺は彼女を好きになっていた。
おっと、いつまでも思い出に浸っているわけにもいかない。
俺は早足でココロの下に戻る。「お帰りなさい」ゆるゆる笑顔で迎えてくる彼女に、「ただいま」笑顔で返す。