青騒-I SAY LOVE-
だから自分なりにできる事を探して、そのできたことを自分で褒めて、自信を持つようにした。
じゃないと励ましてくれたヨウさんに失礼だと思ったから。
それに一生懸命雑用をこなしていたら、向こうのチームの人がこんな声を掛けてくれた。
それは買って来た飲み物を配布していた時のこと。
向こうのチームの副リーダーの涼さんに、
「荒川のところには気の利く女の子がおって羨ましかぁー。どげんしても男は気が利かないのばっかやけん。こっちにも女の子が欲しかぁ。
ばってん、和彦さんが女の子を入れるとは思えんし」
ところどころ九州弁が交じっていたけれど、総合評価として分かったのは気が利く女の子だと私を褒めてくれていたこと。
誰かに褒められると役立っているんだなぁって胸が軽くなった。
小さなことでも誰かの役に立てる、イコールそれが私自身のチームへの存在意義にかわるから。
向こうの人にちゃんとヨウさんのチームメートなんだって見てくれたことに私は嬉しかった。
着々と“エリア戦争”の準備が進められていく中、私は向こうのリーダーさんとお話しする機会も掴む。
同じく飲み物を配布していた時のこと。
浅倉さんはヨウさんと話し合っていたんだけど、「ヨーウ!」ケイさんが舎兄の下に駆けてきたことで話し合いが中断。
ヨウさんは、駆けて来るケイさんにどうしたと声を駆けて歩んだ。
ケイさんはヨウさんの前に立つと、持っていた紙を指でなぞりながら説明を始める。
「商店街の地形のことで一つお前に知ってもらいたいことがあるんだけど、時間いいか? ちょい緊急なんだけど」
「分かった。浅倉、俺はちょっと席を外す。すぐ戻るから」
言うや否や、ヨウさんはケイさんとどっぷり話し始める。
尻目に私は「休憩がてらにどうぞ」浅倉さんに缶コーラを配布、受け取ってくれる浅倉さんは目尻を下げてお礼を言ってきた。
そのまま退散しようと思ったんだけど、「あいつ等は」の掛け声に踵を返せなかった。
そっと浅倉さんを見上げる。
途切れた言葉を繋ぎ合わせるように、浅倉さんは閉じかけた口を動かした。