青騒-I SAY LOVE-
ケイさんは分かっているけれど、でもしょうがないのだと苦し紛れに笑った。
そのうち欲求不満を起こして彼女に逃げられるぞ、茶化すヨウさんの言葉を聞き流し、ケイさんは空を仰いだ。
反射的に自販機に体を隠す私だけど、向こうは気付いていない。
「なあ、ヨウ。強くなるってどうすればいいのかな」
―…強くならないと俺、また過ちを犯しちまいそうな気がする。
消えそうな声だけど、私にはハッキリと聞こえた。
当然舎兄にも聞こえる音量だったから、肩を並べるヨウさんは台詞に瞠目。
弾かれたように首を捻って、ただただケイさんの横顔を見つめている。
「何言い出すんだよ」
ちょっと動揺しているヨウさんは、ケイさんに悩みでもあるのかと声を掛ける。
ケイさんは“これ”が悩みなんだと苦笑い。
びっくりするくらいに弱々しい顔を作って、
「俺の悩み。聞いてくれるか?」
ヨウさんに相談を持ち掛けていた。
聞いてはいけないであろう彼の弱音と、見てはいけないであろうその姿。でも私は立ち去れず、盗み聞きという悪事を働かせる。
快諾するヨウさんは聞くに決まってるじゃねえか、何でも来いよ、明るく笑みを作ってケイさんの肩に手を置いた。
「サンキュ」
やっと頬を崩すケイさんは自分の不安を舎兄に語り始める。
「俺、一度日賀野に人質を取られてお前を裏切りそうになっただろう? それがさ、またありそうな気がして怖いんだ。俺は俺を信じられないのかもしれない」