青騒-I SAY LOVE-
だって思うんだ。
利二の時のような大切な人を人質を取られてしまう、“あの時”のような場面に遭遇してしまったらどうすればいいんだろうって。
俺はさ。
喧嘩できないとか何とか理由をつけて…、今まで強くなることを避けてた。
別の面で補えれば、それでいいんだって思ってた。
だけどさ、これからはそれじゃ駄目なんだって痛感してる。
俺はヨウの舎弟で名前も売れてるから…、知名度が上がった分、喧嘩売られる回数も増える。
回数が増えたら、それだけ俺の周囲に危険が及ぶ。
ヨウは俺の友達を守ってくれるって前に言ってくれたけど、俺もこれからは守られるじゃなくて守る方に回らないといけない。
弱いって自覚してる。
だから俺…、もしも日賀野にココロを人質に取られて、舎弟を迫られたら今度こそ…、そう思うと大切な人を作るって怖いと思った。
この大変な時期に告白してよかったのか、今更ながら悩んでる。
不安にさせるからココロには口が避けても言えないけどさ。
「ヨウ。俺はまた、お前を…、皆を裏切るかもしれない。もう裏切りたくないのに」
ザァアアっと吹き抜ける風は人工的なもの。
彼等の背後で行き交う車達が生み出した風。
排気ガスが混じっているであろう、汚れた風を体いっぱいに受けてケイさんは他人事のように吐露する。
初めて見るケイさんの弱い面に私は呆気取られた。
負けず嫌いの調子ノリと称されているケイさんも、こんな表情もできるんだ。
「馬鹿じゃねぇか」
間髪容れず、ヨウさんは容赦なく一蹴してブレザーのポケットに手を突っ込んだ。
「“また”も“もう”もねぇだろうが。
なあケイ、お前がいつ、俺を裏切ったんだ? 俺は初耳だぞ、テメェの裏切りってヤツ」
「ヨウ…」
「どんな時でもチャリぶっ放して、それこそ仲間に紹介した日でさえチャリを走らせて舎兄の背中を追ってきた舎弟が、いつ、どこで、どんな時に俺等を裏切ったっつーんだ。
テメェいつだって、舎弟として努力してるだろうが。
寧ろ、そんなテメェを俺は一度疑った。どっちが裏切りなんだか」