青騒-I SAY LOVE-


「どっかの誰かさんの勘違いで俺、嫉妬されたっつーのにこうして誰かさんを慰める。いやぁ、俺って超優しい。あまりの優しさに俺は俺自身に涙が」

「うっ…煩いやいっ。それとこれは話が別なんだからなっ! 大体お前がイケてるのが全部悪いっ、イケメンは凡人男の敵だぞ!」

「悪い悪い。カッコよくて」


「ムカつく!」グズッと洟を啜るケイさんはヨウさんに肘鉄砲返しをお見舞いする。

簡単に手の平で受け止めるヨウさんは、大丈夫だと繰り返して彼を励ましていた。


きっと大丈夫、大丈夫だから、と。
 

瞬きをして光景を見つめていた私は忍び足でその場を後にする。

彼にとってには知られたくないであろう、見てはいけない光景を見てしまった。

盗み見したことに対して、反省はしている。反省は。


だけど不思議と悔いはない。


なんでだろう。

好きな人の知らない一面を見てしまったから、かな? 
 

ゲームセンターに戻った私は何だかモヤモヤとした感情を抱く。
 

ケイさん、ヨウさんにはあんな弱い一面も見せられるんだ。

私には見せられないってことは、それだけ見栄を張っている(もしくは格好を付けている)のだろうけれど…、私にも見せて欲しい。

頼りないから見せられないのかな…、それとも私に守ると約束したから見せられないとか?


確かに守ってもらうことは嬉しい、嬉しいけれど…、なんだか嫌だ。

べつにヨウさんと勝負したいわけじゃないけど、私もリーダーと同じくらいに素を見たい。我が儘なのかなぁ。
 

うんぬん悩みながらプリクラ機前に戻る。

私を待ってくれていた響子さんと弥生ちゃんがキョトン顔を作った。口を揃えて、「ケイは?」と聞いてくる。


ハタッと私は思い出した。

そうだ、私はケイさんを呼びに行ったんだっけ!

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