青騒-I SAY LOVE-

 
それも分かっているのだけれど、やっぱり心にしこりが残る。

あの一面は男の子にしか見せられない弱い一面なのかもしれないけれど、その弱さを私にも見せて欲しいと我が儘を抱く自分がいて仕方が無い。

彼女になって早々我が儘が出てくるのだから収拾もつかないよね。


舎兄弟のような強い絆を作りたいと思っているのかも。


「これからなんじゃねーか?」


響子さんがサイダーの入ったペットボトルの蓋を開けながら、当たり障りなく助言してくる。

舎兄弟を結んで随分経つ向こうと、カレカノになったばかりの自分達を比べるのはお門違いだと彼女は肩を竦める。

「欲しい欲しいなんざ思っても」

なっかなか貰えないもんだ、欲しいと思うならまずはあげないとな、フロンズレッドの髪を靡かせて響子さんは頬を崩した。


「そりゃあ、あいつ等の絆は深いだろうさ。あんたも見てきただろ? あいつ等のやり取りを。んと、馬鹿みてぇにお互い真っ直ぐだから傷付くことも多々あって。
それでもここまでやってきて、今がある。男ってのは単純な生き物だから、そうやってストレートにしか生きられねぇのかもな。羨ましいぜ」 


それにココロ、あんただってこうやって悩みをうち等に明かしてケイには明かしてねぇじゃんか?

あいつに言えば解決するかもしれない悩みを告げない。やってることはケイと同じだよ。


ま、簡単にケイにうち等のポジションを取られちゃ敵わないけどな。


女には女同士の、野郎には野郎同士にしか言えないことってあるだろーよ。

ケイがヨウに弱さを見せたのは、野郎同士にしか言えない悩み。

あんたがこうやって悩みを打ち明けているのは、女同士にしか言えない不安ってヤツだ。分かるか、言ってる意味。


だからさ、いつかできると思うぜ。カレカノにしか言えない悩みとか不安ってのが。 


そうなるようあんたも努力すればいい。
支えられるような女になれるかなぁって思うんじゃなくて、なるよう努力すればいいんだよ。

ケイが正式に荒川庸一の舎弟になったように、あんたも努力して支えられる女になればいいんだよ。


「そうしていれば、その内ケイから見せてくれるんじゃねーの? あんたにしか見せない一面ってヤツ。あーあ、アッツイねぇワッカイねぇラッブイねぇ、うちは微笑ましい限りだぜ」

「だねぇ。はぁーあ、こっちなんてヘタレくんがいつまでも腰を上げてくれないし」
 

二人から揶揄交じりの励ましを頂戴してしまう。

頬を赤らめる私は地団太を踏んだ。なんだか悩んでいた自分が恥ずかしくなってきた! 
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