青騒-I SAY LOVE-
立派にリーダーをしているのに、ふと子供っぽいところを見せてくれるよなぁ。ヨウさんって。こっちが素かもしれない。
「ヨウ!」喝破する響子さんから笑って逃げるヨウさんに、私は微苦笑。
おちゃめな人だよな、彼って。
「あいつは命知らずだよな。あの響子さんに喧嘩売れるなんて、さすがは天下の荒川庸一。イケメンはやることが違うや」
私の隣に並ぶケイさんは彼に対して肩を竦めると、「上に行こうか」視線をこっちに向けて綻んでくる。
三階なら不良のたむろ場として有名だからあんま人も来ないだろうし、そう言って私を先導するケイさん。
ちょいちょいと手招きしてくる。
目をパチクリした私は買ったオレンジジュースを両手に持って彼の後ろを歩いた。
もしかしてケイさん、私のことを気に掛けてくれているのかな。
あんなにヨウさんの前では弱弱しい姿を見せていたのに、今は至って平気な素振りで三階フロアに爪先を向けている。
それが寂しいような、微笑ましいような、ちょっと歯がゆいような。
私がもっとしっかりすればケイさんは頼ってくれるんだろうか?
エスカレータをのぼって一階から二階、二階から三階に上がった私達は殆ど人気のないフロアの隅っこで時間を過ごした。
カレカノになって初めて過ごす夜は甘酸っぱい半分、モヤモヤ半分といったところ。
ケイさんは私にいかんなくお調子ノリを見せてくれるんだけど、ヨウさんとの話を盗み聞きしていた手前、無理しているんじゃないかと憂慮する気持ちが出てきたりこなかったり。
けれどケイさんの笑みを見ていると、それさえも霧散してしまうのだから不思議だった。
彼の零す笑顔がただただ可愛いと思えたし、心があったくなるとも思えた。
「ココロって髪長いよな。伸ばしているのか?」
不意に髪のことを指摘された。
私は片手で髪を触り、「切るのがめんどくさくて」と苦笑い。
女の子らしく髪を伸ばしたいという気持ちはなく、ただ美容室に行くのが面倒で髪を伸ばしているだけなんだ。
女の子らしい発言じゃないだろうけど、これは率直な気持ち。