青騒-I SAY LOVE-
今はヘアピンで留めている前髪を伸ばしてしまうのも切るのが面倒だというのとプラスに、あまり顔を見られたくない気持ちがある。
顔に自信がないっていうのもあるし、相手の顔をマジマジと見るのも苦手だからこうして前髪を伸ばしているんだ。
長い前髪なら、こっちがチラチラッと見ても分からないと思うし。
あ、そういえばケイさんってショートヘアの女の子が好きだって弥生ちゃんが言っていたなぁ。
弥生ちゃんが私の恋を成就させてくれようと、色々彼の好みを聞いてくれたんだ。
その時は恋を諦め気味だったから(だってケイさんは弥生ちゃんが好きなんだと思っていたから)、聞き流すだけだったんだけど、今は違う。
私はケイさんと両想いになった。
例え今は自由に恋愛ができなくとも、ケイさんは私を特別な存在として位置づけてくれたんだ。
精一杯守ってくれると断言してくれたケイさん。
裏腹では私を守りきれるか不安でいっぱいだと舎兄に零していた。
けれど私にはそんな素振りを見せない。
私は受け身でいいの?
いや良いわけない。良いわけないよね。
私だってケイさんは誰よりも特別な人なんだから。
「ん、どーした。俺をジーッと見ちゃって。そんなに見ても俺がイケメンに変貌するなんてサプライズはないよ」
おどける彼に、私は一笑してイケメンじゃなくて良いのだと相手に告げる。
「だって私はケイさんが好きなんです。変貌されたら困ります」
一変して、「え。お、おう」戸惑うケイさんは見る見る頬を紅潮させた。一本取ったみたいだ。
満面の笑みを浮かべる私に、「あんれ」こんな筈じゃ…、ケイさんは照れたように頬を掻いて目を泳がせる。
目前の男の子が、ケイさんが、彼が、誰よりも可愛いと思ってしまうのは私が彼に恋をしているからだろう。
唸るケイさんに買ったオレンジジュースを差し出して一緒に飲みましょうと誘う。
すんなり私の誘いに乗ってくれるケイさんと壁に寄りかかって、ペットボトルを一緒に飲み合いっこ。
プリクラのことを途中で思い出したけど、今更一階まで降りたいとは思わない。
だって折角二人っきりなんだから。
せめて自由に恋愛ができない分、今だけは彼を独占させて欲しい。