青騒-I SAY LOVE-
「すぐお茶淹れるから。圭太、自分の部屋で食べるでしょ?」
「うん、お茶は取りに行くから。浩介は習字でいないんだよな?」
「ええ。だから安心して。邪魔はしないから。こころちゃん、ゆっくり寛いでね」
微笑んでくるケイさんのお母さんに私も笑みを向ける。
私には物心ついた時からじいじやばあばしかいなかったから、お父さん、お母さんっていうのが分からない。
でもケイさんのお母さんを見ていると、お母さんって優しい生き物なんだと思う。
ありがとうとざいますと頭を下げて、私はケイさんと一緒に部屋へ。
ケイさんは再三再四、散らかっていると思うと忠告して襖を開けた。
初めて入る彼氏の部屋に私は目を輝かせる。言うほど部屋は散らかっていない。
ベッドに小さなテレビ、ゲーム機や漫画、CDコンポ等々が目に飛び込んでくる。
一人部屋にしては広い。
この広さならケイさんの部屋にシズさんやヨウさんが一度に泊まれるのも頷ける。
やっと訪れることのできた彼氏さんの部屋に心を躍らせ、私はお茶を取りに部屋を出たケイさんを見送ると、早速荷物を置いて机の上を拝見させてもらった。
教科書が山積みされている。
本掛けに立てかけるのが面倒だったみたい。
四隅に押しやられている。
他に見受けられるのはゲームソフトやCDケース。郵便ポストの貯金箱もある。男の子らしい机だと思った。
「習字の本もあるんだ。ケイさんらしいなぁ。あ、この紙は」
私は机横に落ちている紙切れに目を留め、それを拾った。
ルーズリーフみたいだけど、授業用ノートじゃなさそうだ。
それには今日の日付と時間と行く場所のスケジュールが書き込まれている。
電車の時間や運賃、映画の上映時間等々も記されていた。
ケイさん、今日のデートで色々調べてくれていたんだ。
なんだか愛されているなぁって気分になった。
ケイさんがここまでしてくれていると思うだけで、胸があったかくなる。
「“映画の後は女の子の好きそうな喫茶店?”か。ふふっ、ケイさん、私のことばっかり」
ケイさんの名誉のために、これは見なかったことにしてあげよう。
私は笑声を零しながら、ルーズリーフを机上に置く。