青騒-I SAY LOVE-
本棚に目を向けて時間を潰していると、お盆を持ったケイさんが戻って来た。
「お待たせ」足で襖を閉めるケイさんは、適当に座っていいからと机にお盆を置く。
で、「ゲッ!」声を上げていた。
慌てた様子で紙を丸めているケイさんに視線を流すと、
「なんでもないよ」
とそれを屑篭に放っていた。
さっきのルーズリーフを丸めたみたい。
込み上げてくる笑いを押し殺して私は気付かぬ振りをした。ケイさんって見た目に似合わずプライドが高いから。
ミニテーブルを出し、お盆の上のものを並べるケイさんは「普通の部屋だろ?」と話題を切り出してきた。
「ゲームが沢山ですね」
モトさんとよくゲームのことで話しているのも頷けると、私は答弁する。
「ケイさんの部屋にお邪魔したことあるのって、ヨウさんやシズさんだけですか?」
「ううん。あとは利二。健太も来るよ。最近はヨウやシズが多いな。あの二人は家の事情があるから…、俺の家は大歓迎なんだけどさ」
ヨウさんやシズさんは家庭の事情が複雑だとよく耳にしている。
ケイさんがグループに入る前は二人とも、寝泊りに困っていたみたいだし。
家に居場所がないって口癖のように言っていたっけ。
二人も随分苦労しているみたい。
私の家に泊まっても良いって言ったことはあるんだけど、二人とも遠慮しちゃったんだよね。
やっぱり私が女の子だからかな?
ケイさんにそれを言うと、
「俺だったら遠慮も遠慮だって」
と苦笑いを返された。
そうだよね、私がその立場だったら、是非とも女の子の家にお邪魔したいもの。
クリーム大福を手に取り、かぶりつく私は「あ。美味しい」と感想を述べた。
「だろ?」あそこの和菓子屋は大福が超絶に美味いのだとケイさんは意気揚々と語る。
子供のように語るケイさんに笑い、私はケイさんの趣味にしていると言っているゲームに目を向けた。