青騒-I SAY LOVE-
翌日のこと。
昼前に私達は病院を訪れた。
もう意識は戻っているだろうか、どれほどの重傷なのだろうか、しきりにハジメさんの心配をする弥生ちゃんは腫れぼったい目をしばしばさせ、目が覚めていることを切望している。
大丈夫だと言葉を掛けながら、受付カウンターを訪れた私は弥生ちゃんに代わってハジメさんの病室を尋ねた。
昨晩は何処の病室に居るのかさえ教えてもらえる機会がなかったから、今日初めてハジメさんの病室を知ることになる。
と、思っていたのだけれど返ってきた答えに私も響子さんも弥生ちゃんも愕然。
看護師さん、「土倉肇さんはこの病院にはいません」って答えたんだ。
え、じゃあ、何処に。
慌てふためく響子さんが昨日確かにハジメさんが運ばれたのだと旨を伝える。
すると別の看護師さんが他の病院に移されたのだと答えた。
だったら病院を教えてもらおう。
そう思って聞いたんだけど、誰も何も答えてはくれなかった。
なんで教えてくれないのか、不思議でいっぱいだった私達は渋々受付カウンターを去る。
何度聞いても教えてくれないから埒が明かなかったんだ。
あからさま迷惑そうな面持ちをされたら、去るしか方法はない。
「どうして」鼻を啜る弥生ちゃんが打ちひしがれたように涙ぐむ。
「個人情報だからばっかりだったな」
響子さんは舌を鳴らし、教えてくれなかった看護師達に憤りを見せていた。
「ハジメの顔。見たいだけなのに」
「弥生…、とにかく今は落ち着こうぜ。全員揃って動揺してもどうしょうもねぇよ。トイレで洗顔しようぜ。な?」
「な?」響子さんの慰めに頷く弥生ちゃんだったけど、私達は女子トイレ近くの廊下で聞いてしまう。
ハジメさんのご両親がお金を支払って他の病院に移されたことを。
私達と縁を切らせるために、わざわざ病院を移し変えたことを。
院長がお金を貰っていたのを見たと看護師さん達がひそひそ話をしているのを偶然にも聞いてしまった。
嗚呼、そんな。
何処の病院に移されたのか聞いても、看護師さんが教えてくれなかったのはこういう意図があったんだ。