青騒-I SAY LOVE-
大事な学校生活を彼女に取られてしまったんだ。
小中時代は必死に耐えてきた、あの陰湿なストレス発散の日々。
どうにか耐えて耐え抜いて…、今があるのに。独りを強いて、孤独感を抱き、表情を歪ませることが大好きだった古渡さんから、進学してやっと彼女から解放されたと思ったのに。
響子さんという素敵な先輩と出逢い、私を受け入れてくれる人達に出逢えたのに、不良でもすっごくあったかい人達に恵まれたというのに。
何故、どうして?
私はどうしてまた彼女にめぐり合おうとしているの?
彼女の魔の手に掛かろうとしているの?
瞬時に溢れてくる記憶が胃にストレスを与え、嘔吐感が込み上げてきた。
どうにかこれ以上思い出したくない思い出に蓋をして気持ちを堪える。
でも震えは止まらない。写真を見て動揺してしまう私はそれから目を逸らし、ブルブルと体を震わせ、震わせ、震わせ。
心配してきた響子さんの声が引き金となって、嘔吐感が絶頂に達した。
嫌、折角めぐりあえた人達を、友達を、好きな人を奪われたくない―――!
「は、吐きそうです…」
私が小声で訴えると、ギョッとチームメートが目を削ぐ。
本当に吐きそうだ。嘔吐(えず)く私に、
「ココロ。外に行くぜ!」
響子さんが肩を抱いてその場から連れ出してくれた。
弥生ちゃんも後から追って来る。倉庫裏まで来た私はその場で両膝をつき、嘔吐しようとするんだけどどうしても吐けなかった。
込み上げてくるのは恐怖心ばかり。
また恐れていた日々が始まるんじゃないかという被害妄想が込み上げてしまい、呼吸さえ忘れてしまう。
「ココロ。水飲める? 私の水、あげるから」
弥生ちゃんに声を掛けられているのは分かるけれど、言葉は耳に入ってこない。
「やっぱり私は」根暗で何もできないうじ虫なのだと嘆き、古木材に背を預けて膝を抱える。
「ココロ」
そんなことないよ、弥生ちゃんの言葉が遠い。
「あの女になんかあんのか?」
うちがぶっ飛ばしてやるからさ、響子さんの言葉さえも遠い。何もかもが遠い。