青騒-I SAY LOVE-
ケイさんはよく眠った。
本当に深い眠りについているようで、まったく寝返りを打つ気配がない。
度々ヨウさんが様子を見に来たんだけれど、その度に私は目覚めていないと首を横に振るしかなかった。
次第次第に不安も募っていく。
頭を強打したのだから、もしかして脳に損傷が出ているんじゃ。
訪れるヨウさんの表情も焦燥感と並行して憂いが垣間見えていた。
や、やっぱり病院かもしれない!
これだけ気を失っているのだから、きっと何かあるんだ!
持ち前のネガティブがいかんなく発揮し、それが絶頂に達した頃、ソファーから身じろぐ音が聞こえた。
ハッと我に返った私は怪我人の顔を覗き込む。
そこには重たそうな瞼を持ち上げるケイさんの姿。
良かった、目が覚めたんだ。
安堵の息を漏らしながら、私はケイさんに声を掛けた。
でもケイさんは私をぼんやりと見つめるだけ。反応が薄い。
「ケイさん。大丈夫ですか?」
恐る恐る声を掛けると、五秒ほど時間を置いてケイさんはうんっと返事をした。
ちっとも大丈夫そうじゃない。
焦点が定まっていないもの。ケイさんは自分が誰かも分かっていないように、ただただ重たそうな瞼を下ろしては持ち上げている。
「私が分かりますか?」
自分を指差して簡単な質問を投げかける。
視線を投げるケイさんはさっきよりも長くを置いてうんっと頷いた。
じゃあ私の名前は? 聞くと、ケイさんはダンマリ。
大慌てでケイさん自身の名前を聞いてもケイさんはダンマリ。
私の声が届いているのか届いていないのか、分からない反応だ。
サーッと血の気を引かせる私は、「やっぱり病院に…」スツールから腰を上げるとケイさんに此処で待ってて下さいね、と声を掛け、すぐさま隣室に向かった。
けたたましく扉を開けた私の乱暴な動作に、隣室にいた仲間や浅倉さん達が目を見開く。
「ココロさん?」
どうしたんっスか、キヨタさんがおずおず声を掛けてくるけれど、私はちっとも冷静じゃない。
あたふたと「ケイさんが目を覚ましたんです」でも様子がおかしくて、と早口に説明。
「な、なんだか私のことが分かっていないみたいで。びょ、病院じゃないかと」
過剰反応したのは、苛立ちを募らせて舎弟の目覚めを待っていたヨウさんだ。
様子がおかしいと聞くや否やケイさんのいる部屋に飛び込んでしまう。
私も後を追って部屋に戻ると、ヨウさんが眠りに落ちそうなケイさんに呼びかけていた。