青騒-I SAY LOVE-
「ケイ、俺が分かるか? 大丈夫か?」
間延びした返事をするケイさんは、「イケメンだ」とぼそり呟いていた。
確かにヨウさんはイケメンさんです。
女の子だったら見惚れてしまいそうな美貌を持った不良さんです。
イケメンは正解ですけれど、ヨウさんが聞いたのは自身のことであって。
また瞼を下ろそうとするケイさんはどうにか気力を振り絞って目を開けている様子。
で、やっとヨウさんの問い掛けにうんっと頷いた。
「名前分かるか?」
ヨウさんの問い掛けに、ケイさんはうん。
「いや名前だって」
ちょっと焦るヨウさん、ケイさんはうん。
「おなまえだぞ」
大いに焦るヨウさん、ケイさんはやっぱりうんっと頷くだけ。
……、これは大変危険な状態じゃ。
「あんま大丈夫じゃ無さそうだな。すぐ病院だな。けど何科になんだろ」
「頭をぶつけたんですから、脳神経外科じゃないでしょうか。ど、どうしましょう…、ケイさんが記憶喪失みたいになっちゃったら!」
「ど、ドラマの観過ぎだぜココロ。大丈夫だって。き、き、きっと…、今は判断力が低下しているだけで」
「……、本当ですか?」
「……、た、多分」
不安そうに言われても説得力がありませんよ、ヨウさん!
あわあわ、でも本当にどうしよう。
よくドラマの展開で記憶喪失っていうのがあるけど、本当に記憶がすっ飛んでしまっていたら。
私は誰、此処は何処、皆はどなた? みたいな展開になったら、私、な、泣かない自信が……!
ううん、どんなケイさんだろうと私は傍にいる。いるんだ!
ケイさんがどんな私でも受け入れてくれたように、私だって!
「びょういん、いい」
と、ケイさんが私達の会話に割って入ってきた。
病院に行かなくても大丈夫だと言うケイさんは、ゆっくりと上体を起こし、「イタッ」頭を押えている。
殴られた箇所を押えるケイさんは、酷い頭痛がすると呻いた。
頭がズキズキすると苦言するケイさんに、「大丈夫じゃねえだろ」ヨウさんはソファーの縁に腰掛けて彼に無理するなと紡ぐ。