青騒-I SAY LOVE-
「なあ、ココロ。この体勢でやんなきゃ駄目?」
「手元が見えるベストポジションですから!」
えぇええ、でもなんか辛い。
視覚的にも精神的にも辛いよ、この体勢。
俺は自分の腕の中にいるココロに「……」な気分になった。
なんで俺はココロを後ろから抱え込むようにコントローラを持ち、コンピュータと闘いを挑んでいるんでっしゃろう。
完全に下心ありな体勢だろ、これ。
いや俺は疚しい気持ちなんてちょっちも!
ちょっち…、いや、ちょっちあるかもしれないけど、でもでもそれは思春期の心情としては当然の気持ちでありまして。
とにもかくにも集中できねぇ。
例えコンピュータのレベルが1であろうと、ゼンッゼン集中ができない。
染み付いたゲームの感覚が勝手に指を操作してくれるんだけど、彼女とのこの至近距離…、パないぞ。
ココロさん、なんて大胆な体勢を。
ボタンを連打する俺にココロは感嘆の声を上げて、「指の動きが速いですね」なんで見ないで操作できるの不思議でならないと首を傾げている。
それこそもう感覚だろ、熟年の感覚。
小学校低学年からゲームしていたんだ。慣れない方がおかしっ、うおっつ!
ココロが俺に寄りかかってきた。
余計ゲームがやりにくいっ…、視覚的にも精神的にも以下省略。
なにワザと? ココロ、それはわざとなの?!
と、ココロが笑声を噛み殺しているのに気付いてしまい、俺は故意的なのだと察した。
だから俺も故意的に腕を締める。
狭くなったことにココロが声を上げたけど、スルーしてゲームに勤しむ。
殆ど密着に近い体勢で一試合を終えた俺は、画面に映る『YOU WIN!』の文字を尻目に技は盗めたかクエッション。
頬を赤らめながらはにかむ彼女は、首を捻って俺を見上げると「ケイさんの体温は盗めたみたいです」ケイさんって体温高いんですね、と茶化してきた。
体温が高いのは体勢のせいだって。
俺は自分の部屋をイイコトに、コントローラーを持ったまま彼女を抱き締めた。
此処では自由にラブラブしてもいいだろ? 人目もないんだしさ。
きっと彼女もこれを望んでいたのだろう。
おとなしく腕に収まって、全体重を俺に預けてくる。