青騒-I SAY LOVE-
安堵する俺達に、「ヨウとケイは無事じゃないね」大丈夫? と弥生がありきたりの言葉を掛けてくる。
大丈夫だとヨウは苦笑し、持っていた粥の器をベッド用テーブルに置いて肩を竦める。まあ、大丈夫っちゃ大丈夫だ。
俺もヨウもおどけられるんだからさ。喧嘩のことはあまり考えないようにしているし。
そう答えるヨウと俺に響子さん達は苦笑で返す。
今は苦笑いしかできないようだ。
俺達と同じように。
と、俺はさっきからダンマリになっているココロの様子がおかしいことに気付いた。
病室に入ってからずっとダンマリで俯いてばっかだけど…、俺の方をちっとも見てくれないというか。
「ココロ?」
俺がそっと名前を呼ぶと、やっとココロが顔を上げた。
で、俺と視線がかち合った刹那、声にならない声を漏らすと顔をぐしゃぐしゃにして駆け足。
ベッドに歩んだと思ったら、ワッとその場に崩れて泣き始めた。
ギョッと驚く俺を余所にココロはベッドの縁に上体を預けて火が点いたように泣く。
「こ、ココロ」
うろたえるヘタレ田山なんぞ目にもくれず、布団に縋ってうーうーっと彼女は声を上げるばかり。大パニックもいいところだ。
だって女子を泣かせるって俺の経験上、殆どないことだぞ! マジだぞ、ほんとだぞ、嘘じゃないぞ!
「こ、ココロ。どうした? なんか、あったのか?」
「そうじゃねえだろケイ。ココロは心配してたんだよ」
ほら慰めたれ、ヨウが仕方がなさそうに笑って俺に助言してくる。
な、慰めって…、ああ…えあぁあっと…、掛ける言葉も見つからず、俺はぎこちなく彼女の頭に手を伸ばし優しく撫でてやる。
一層声を上げて泣かれてしまい、俺は硬直。今の行動はKYか? KYなのか?!
「おいケイ」
ちゃんと慰めてやれって、舎兄から非難されるけど、おぉおお俺だってこんな状況に遭遇したことがないから困り果ててるんだよ!
どうすることもできなくて、俺は頭を撫でてやることしかできない。
迷子になった子供を宥めるようにココロを撫でていると、ようやく彼女が顔を上げた。
ウサギさんみたいに目が真っ赤。
充血した眼は俺を捕らえ、またボロボロと涙を流す。
もう喋ることもできないのか横隔膜が痙攣しているのか、ヒックヒックと喉を鳴らし、
「よかっ…、よかっ」
目が覚めたことに対して良かったとポツリ。
二度と目が覚めないんじゃないかと思った。そう嘆くココロは俺や仲間達が目覚めたことに良かったと零し、俺の姿を見てわんわん泣きじゃくる。