青騒-I SAY LOVE-
「兄ちゃん。なんで反対に持ってるの?」
「え? あぁあ、ちょっと新しいゲームの価値を見出そうとしてさ。
いいか、物事は斜めから見ることも大切なんだぞ。新たな発見があるかもしれない!」
勿論、嘘だけど。
「あ! 兄ちゃん、なんかジャムっぽいの食べた? 口端にピンクいのついてる!」
ピンク…、ピンクいの?
生クリーム大福は食べた記憶があるけど、ピンク…赤い物系は何も食べていないぞ。
苺大福も食べていないし。
他に赤いの、赤いの、あかい、ピンクいの、唇、あか、ぴんく…、ま、まさか!
「おかーさん! 僕もおやつ!」
浩介はすっかりおやつに気を持っていかれたのか、荒々しく襖を閉めてバタバタと足音を立てて居間へ走って行った。
ドッドッド。
鼓動を高鳴らせる俺の隣で、いそいそと髪を整えているココロは赤面して「その。すみません」と小声で謝罪してくる。
いやこれは同罪だって。
俺もその、積極的に、あー、積極的にだなぁ。
俺達はピンクいの正体に気付いてしまい、ぎこちない空気を漂わせてしまう。
俺の口端についていたピンクいのは、彼女の唇の表面に塗ってあるものです。キスした際に付着してしまったと思われます。気付きませんでしたです。はい。
「け、ケイさん。ティッシュで取りましょうか?」
ポケットティッシュは持っているとココロ。
ぎこちなーく俺はどっちについているかと彼女に尋ねる。
食指で右に付着していると教えてくれたら、俺はそれを舌で舐め取った。
「へっ?」間の抜けた声を出すココロに、「だって」拭うのは勿体無いと視線を逸らして発言。