青騒-I SAY LOVE-
ご家族に挨拶を終わらせた後、私は自転車の後ろに乗せてらう。
夜風を頬で受け止めながら、今日は楽しいデートだったと彼に感想を述べた。
「なら良かった」
俺も楽しかったよ、ペダルを踏んで自転車を前に前に進むませるケイさんはまたデートしようなと言ってくる。
一先ず大きな喧嘩も終わったし、今は気兼ねなくカレカノを表に出せる。
「遠慮しなくていいからさ」
何かして欲しいことがあれば言っていい、一瞥してくる彼に私は笑みを返す。それはお互い様ですよ、ケイさん。
ふと私はケイさんが帰宅路から外れてどこかに向かっていることに気付く。
あれ、私の家、こっち方面じゃないのに。
見慣れない目抜き通りを突っ切るケイさんは、ちょっと寄り道をしようと言って暫く自転車を漕ぐ。
辿り着いたのは昼間に見た駅。
駐輪場じゃない場所に自転車をとめるケイさんは、十分くらい放置しても大丈夫だろと言って私の手を引いた。
何処に向かうのか、それはケイさんしか知らない。
疑問符を頭に浮かべながら彼について行く。
ケイさんは駅内にあるプリクラ機を見つけるや、「俺が奢るから」と言って私の腕を引いたまま、そそくさと中に入った。
まさかケイさんからプリクラを撮ろう誘われるなんて思いもしなかった。
呆気とられる私を余所に、ケイさんは投入口に百円玉を入れる。間際に照れ笑い。
「ココロ。思い出作り好きだよな?」
あ。
私は声を漏らした。
ケイさん、憶えててくれたんだ。私が小中時代に思い出が作れなかったから、高校になって何かと写真やプリクラを撮りたがっていることを。
思い出を形にしたい、私の気持ちを知っていたからケイさんはプリクラに誘ってくれた。
胸が熱くなる。
思わず涙が込み上げそうになったけれど此処はぐっと堪えることにしよう。
だって折角のプリクラだもの、笑顔で映りたい。
「プリクラ、五十嵐戦後以来だな」
ケイさんが綻ぶ。
うんっと私は首肯した。