青騒-I SAY LOVE-
#02. 優しさは優しさで、悲しみは悲しみで
そういえば、私を苛めていた古渡さんの話を弥生ちゃん伝いに聞いた。
五十嵐戦後の古渡さん……、相変わらずらしい。
今度こそ自分の美と権力を振るえる頂点を目指して、あっちこっちを彷徨っているんだって。
けれど不良関連にはもう手を出さないだろうと弥生ちゃんは言っていた。
自尊心を完膚なきところまで叩きつけられたのだから。
「あの喧嘩で中退したらしいよ」
港倉庫街で起こった火事の共犯だと学校の耳に入ったらしく、退学を余儀なくされたらしい。
この前、弥生ちゃんが古渡さんを見かけたらしいんだけど、得体の知れぬリーマンと歩いているところを見たとか。
あれは絶対にエンコーだと弥生ちゃんは断言していた。
ブランド物をせびるために誑し込んでいるに違いない、弥生ちゃんは女豹だと熱弁していたっけ。
「ちなみに」
私の姿を見ると逃げるように立ち去られました、誇らしげに笑う弥生ちゃんは喧嘩で勝ったせいだろうね、と一笑。
彷徨しているということは、彼女の心休まる居場所が見つかっていないのかも。
これまでの彼女の仕打ちやら悪意やらを思い出すと、決して許せることではないけれど、同情は芽生えてしまった。
いつか彼女にも居場所や仲間が見つかるのかな?
私の疑問に響子さんはこう答えてくれた。
「古渡が変わらない限り、そりゃ無理だと思うぜ。
人に優しくしてやれば、いつか優しさを返される。
人に笑ってやれば、いつか笑いを返される。
人に憎しみを投げれば、いつか憎しみが返される。
世間体はそういう作りになっているとうちは思う。あいつはちっとばかし人を傷付け過ぎた。
なあ、ココロ。傷付けられた輩の怨念って何処に消えると思う?」
「分かりません」
「答えはそいつに返って消える。例えば、ココロが古渡に引っ叩かれたとする」