青騒-I SAY LOVE-
その痛みは古渡から与えられたもので、他者から与えられたものじゃない。
ココロは自然と古渡に憤りを抱くだろ?
思い余って仕返しをするかもしれない。
仕返しをした時、気持ちがスカッとするかもしれねぇ。
傷付けられた輩の怨念って、そいつに返って消えるんだとうちは思うぜ。
あいつがそれに気付かない限り、怨念のサイクルは続く。きっとな。
人の幸せを砕いてまで自分を幸せにしてぇ。
それもまた人生だろうし、うちがどうこう言うべきところじゃないだろうけど、あいつは平穏な人生を歩めないと思うね。
ま、お偉い首相や政治家でも人の心は変えられねぇんだ。
あいつ自身が何かに気付いて、心を入れ替えない限り、終わらないだろうよ。
あいつ自身の怨念サイクル。
「それって幸せなのでしょうか? なんだか、可哀想に思えます」
「さあな。あいつ自身が決める人生だ。
ココロ、あんたはそれを反面教師にしていきゃいいんじゃねえか?
傷付けられた分、アンタは誰かに優しくできる。
そういう気持ちを持っているんだから」
響子さんの言葉に微苦笑を零し、私は苛めっ子だった古渡さんを暫し想った。
彼女とは決してお友達になれない。復縁できないところまで関係は捩れ切ってしまった。
彼女が歩んでも数々の過去を思い出し、私自身が拒絶してしまうだけだろう。
何もかもが正反対の立ち位置にいた私と古渡さんだけど、それでもひとつ、彼女に想うことがある。
人の痛みに気付ける人になればいいな、と。
「ココロらしい気持ちだな」
私の吐露に響子さんはウィンクをして一笑を零した。
「会ったらどうする?」
姉分の意地悪い問い掛けに、私は深慮。
会えばきっと気まずいだろうし、できることなら二度と逢いたくないけれど、また彼女に出逢った時、私は今までのように過剰なほど相手に怖じることはないと思う。
だって私はもう、ひとりぼっちじゃないから。