青騒-I SAY LOVE-
絶句している俺を余所に、ココロは俺の前に立ち止まってハァハァッと乱した息を整える。
遅くなってしまったことを詫びてくる彼女は、ふーっと息をついて折っていた体をしゃんと立て直す。そして両手を合わせてきた。
「ご、ごめんなさい。遅刻してしまいました。もっと早く家を出る予定だったのに!」
矢継ぎ早に喋ってくる彼女のワンピース姿に、次いで薄っすらと化粧されたその顔に目が点。
次いで猛烈に意識する俺がいたりいなかったり。
いや意識するだろ!
可愛らしい真っ白なワンピース(花柄入り)に身を纏っている上に、薄っすらと口紅をしているんだからさ!
…いつもより綺麗…、じゃんかよ。
畜生、女の子ってホント化ける。
いや本領を発揮すると、こんなにも……、なんだな。
ダンマリになっていた俺だけど、「本当にごめんなさい」謝罪してくるココロによって、どうにか息を吹き返す。
「気にしてないよ」
それより行こうか?
微笑を返して、俺は歩みの一歩ッ、イッデ!
自分のとめていた愛チャリに足を引っ掛けて、危うく転倒しそうになった。
わ、忘れてた。
俺、チャリで来てたんだっけ。
映画館の入ってる複合商業施設までは電車で行くつもリだったんだけど、駅まではチャリでっ、イッテっ、弁慶の泣き所っ、超痛ぇ!
「だ、大丈夫ですか?」
ココロに心配させちまうし。
「ははっ、大丈夫大丈夫」
俺は彼女に誤魔化し笑いを向けた。
けど彼女の不安げな眼差しに、俺はたっぷり間を置いて、咳払い。
くそう、いいか、俺だってなぁ、男だからなぁ、彼女になぁ、キザっつーかなぁ、言葉を贈ってやりたいんでい。
どうせ俺とココロしかいないんだ。
言ってやったって誰も笑いやしないだろ? なあ?
「ちょ…動揺してるだけだから。ココロ…いつもより…、その…、あれ、うん、綺麗…っつーかさ…。雰囲気違う…な」
最後がめっちゃ小声、蚊の鳴くような声になっちまった。
俺って超ヘタレー!
こういう時こそガッツーンと言うべきなんじゃねえの?!
でも仕方が無いっ、経験ないんだものー!
経験値なしの男がクールにキザにズバッと決めろとか無理ぽ!