青騒-I SAY LOVE-
◇ ◇ ◇
「んーっと…上映時間まで、まだ時間あるな。ココロ、ナニ飲みたい? 俺、買って来るから」
「え、でも」
映画館に入った私はケイさんからの申し出にたじろいだ。
確かに喉が渇いていたりするんだけれど(駅から映画館まで歩いたせいかな?)、彼に買いに行かせるのは大変申し訳ない。
我慢できない渇きでもないから大丈夫だと断りを入れるけど、「彼女の特権特権」ケイさんはおどけ口調で笑った。
買って来る代わりに席に置いている荷物を見てもらいたい、と言ってくるケイさんは財布を片手に何が飲みたいかと再度質問を浴びせてくる。
私は間を置いてオレンジジュースと答える。
彼の行為に甘えようと思った。
「了解」ケイさんはすぐに買って来ると手をヒラヒラ振ったけど、すぐ立ち止まって私に重ねて質問。
「パンフ買う派?」
「あ、記念に買う派ですけど」
するとケイさん、それも買って来ると目尻を下げて今度こそ売店に向かってしまった。
止める暇も無かった…、あう…、後でお金…渡そう。
本当にケイさんは気配り上手だなぁ。
相手の空気を読んでくれるというか、何というか。
ただでさえ遅刻したことに申し訳なく思うのに、ケイさん、もろともせず笑顔を私に向けてくれる。
しかも…綺麗って言ってくれて。
これも弥生ちゃんや響子さんのおかげだ。
二人が服をコーディネートしてくれたり、お化粧品を貸してくれたりしたから。
好きな人に綺麗って言われて嬉しくない私じゃない。
小躍りするほど嬉しい言葉を貰って、今、凄く機嫌がいい。
私もつくづく現金な性格だよなぁ。