青騒-I SAY LOVE-
此処を通るのは止そう、そう思った時、私の足元近くに何かが飛んでくる。
「ん?」目を凝らして見てみると、それは煙草の箱。
まだ封の切られていない煙草がなんで此処に…、拾って手に取る。
まさか…ぎこちなーく体育館裏の方を見ると、憤っている先生を宥めながら、目を盗んでこっちに向かって煙草を投げている不良さんの姿。
嗚呼、煙草、隠し持ってたんだ。
しかも向こうにも煙草の箱が落ちて…、これってやばいくないでしょうか…。
「本当にもう持ってないんだろうな? 三ヶ森」
「うーっせぇジジイだな。持ってねぇよ」
「とか何とか言って、お前、隙を見て適当な場所に投げたんじゃないだろうな。前もそうやって難を逃れようとしたからな」
ギクリ、不良さんの目が泳ぐ。
途端に先生が周囲に目を向け始めた。
「おい」近くを通り掛った私に声が掛けられる。
「は、はい」上擦った声を出す私に煙草が落ちていなかったかと、先生が質問。
ブンブンブンブン首を横に振る私は何も知らない、と愛想笑いを浮かべた後、会釈してその場を去る。
そして校舎陰までやって来て、「ばかぁ!」私は自分を罵った。
何故なら、咄嗟にあの煙草の箱、拾って手提げ袋に隠してしまったからだ。
だって拾った同時に、先生がこっちを見てきたんだもん。
隠すしか思考が回らなかった!
……でも、どうしよう。
煙草、二箱も拾ってきちゃったよ。
しかも不良さんの物であろう煙草。このままパクって捨てたりしたら、呼び出し、「てめぇえナニしてんだぁあ!」とか怒られ……。