青騒-I SAY LOVE-


いや、それはいじめられたくなくって。


なんて言えず…、「たまたまです…」頑張って笑顔を作ってみた。

私にしては上出来な対応だと思う。

女不良さんは私に一笑、次いで手提げ袋の中身を見て「飯食ってないのか?」聞いてきた。

コクコク頷く私の雰囲気で察してくれたのか、女不良さんは一緒に食べないかと誘ってきてくる。

自分もまだ食べていないのだと傍に放置していたコンビニ袋を指差すものだから、私はご一緒させて頂くことにした。

だって…不良さんのお誘いを断るほど、勇気ないし。
どうせ独りで食べてたし。
断る理由も見つからないし。


こうして私は女不良・三ヶ森響子先輩と一緒に奇妙奇怪なランチタイムを取ることになった。


高校に入って初めて誰かと一緒に食べる瞬間でもあるんだけど、ソレは嬉しいんだけど、まさか不良さんと一緒にご飯を取るなんて。

でも不思議と三ヶ森先輩は怖くなかった。

ちなみに三ヶ森先輩は私の一個上、二年生なんだって。


「あの、三ヶ森先輩」

「響子でいいぜ? 先輩って変なカンジするし。アンタ、名前は?」

「あ…若松こころと言います」

 
「こころ。へえ、可愛い名前じゃねえか。
しっかし名前は可愛いのに、なんだ? この前髪。ちょい伸びすぎだぞ? 顔が隠れてらぁ。

あ、ちょっと待ってろ。
確か……、あった。

飯食う時も邪魔になるだろうが。横に分けるか、もしくはこうやってピンで留めとけ。ほれ可愛くなった」
 
 
三ヶ森先輩…じゃない、響子さんは私の長い前髪を掻き分けてヘアピンで留めてくれる。

次いで手鏡を私に手渡し、可愛くなっただろ? と言葉を貰った。

明るく、そして気さくに話し掛けてくれる響子さんのサッパリした性格は私にとってとても有り難く、すぐに素の笑顔が零れるまでになった。


学校で笑うことなんて殆どなかったものだから、笑うことが久しく思えた。
 
< 41 / 322 >

この作品をシェア

pagetop