青騒-I SAY LOVE-

「ゲーセンってのは簡単に金を取られるんだぞ。
ってことは、得るものがねぇとこっちは損。

つまり負けってわけだ。
俺はいつも…こいつ等にシてやられる。今日こそはっ…、いざ」
 

チャリンと五百円玉を投下。

真顔になってイケメン不良さんはあらゆる角度からUFOキャッチャーを見つつ、標的の宇宙人人形に狙いを定める。

UFOクレーンがまず右に動いて、次に上に向かって移動。
私達は固唾を呑んで光景を見守る。

ゆっくりとクレーンが下におりて、そのまま標的を鷲掴み。

ゆっくりゆっくりと上に…、クレーンだけが上がった。


「……」

「……」


私達の間に一瞬の沈黙が流れる。

ゲームセンターのBGMがやけに大きく聞こえるのは私達がダンマリになってるから…?


「……、あの、えっと、これを喧嘩に負けたと言うんですか?」
 
「……、シてやられたっ。くそっ、何が駄目なんだ? クレーンの螺子が緩いんじゃねえのか? もういっちょ」
 
 
近未来を想像させるような音を出しながらUFOのクレーンは移動を始める。
 
その結果、私達がまた沈黙という残念な結果に…、鷲掴みはするけど持ち上がらない。

「ぜーってぇおかしい」

ちゃーんと狙いを定めてるのに、なーんで取れねぇんだ?
不貞腐れるイケメン不良さんは「やってみね?」私に声をかけてきた。

「え?」

でも難しそう…、尻込みする私に何事も経験だってイケメン不良さんは背中を押してきた。

後でお金は返すことにして(だってこれ彼のお金)、私もいざチャレンジ。


角度を見ながら(1)のボタンを押す。

するとUFOクレーンが右に移動、次いで(2)のボタンを押して上に移動させる。


「いい感じじゃん」

「そうですか?」


揃って、人形と睨めっこしながら勝負!
クレーンは下におりて標的を鷲掴み。

ゆっくりゆっくりと上に持ち上がって、あ、人形がぶらさがってる!

…ああっ、移動の途中で落ちちゃった。

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