青騒-I SAY LOVE-
残念だと肩を落とす私に、
「スッゲェ」
俺は持ち上がりもしなかった、イケメン不良さんは微笑を向けてくる。
「ココロすげぇな。初めてにしちゃ喧嘩の心得、あるじゃねえか」
屈託ない笑顔に、私も自然と笑顔が零れた。
イケメン不良さん、地味で根暗で頭をぶつけてしまった第一印象最悪な女の子とも隔たりなく喋ってくれる。
その何気ない優しさが嬉しかった。
つられて微笑を零していたら、「勝負しね?」イケメン不良さんが提案を出してくる。
「勝負?」首を傾げる私に、イケメン不良さんが折角なら面白いことをしようと目尻を下げた。
「先攻後攻を決めて、どっちが先に人形を取れるか勝負すんだ。予算は最大で千円。お互いに五百円ずつ払う。千円になったら、勝負は引き分け。
おもしろそーだろ?
あ、折角なら人数増やすか。割り勘する負担が減る」
おどけ口調で言うイケメン不良さんは「ハジメ!」、近くにいた不良さんを呼びつけた。
呼ばれた不良さんの名前はハジメさん…、自己紹介してもらったのに、挙動不審の上に上の空だったから名前と顔が全然一致していないなぁ。
……イケメン不良さんの名前、なんだっけ?
こんなにも私と仲良くしてくれる…、彼の名前は…。
「呼んだかい。ヨウ」
―…あ、そうだ。
この人の名前はヨウさん、荒川庸一さんって言ってたっけ。
恍惚に私は彼を見つめる。
ハジメさんに軽く自分の考え出したゲームの説明を始める彼は、私に視線を流してクシャリと子供っぽい笑顔を咲かせた。
「うっし。ココロ、勝負だ、勝負。ぜってぇ負けねぇからな」
当たり前のように仲間として接してくれる彼、「負けません。庸一さん」と私は言葉を返した。
「ヨウでいいって」
タメなんだしさ、庸一さん…、ううん、ヨウさんは一笑した。