青騒-I SAY LOVE-
(私は不良というだけで相手と距離を取ってたのに…、ヨウさんは隔たりなく接してくれた。ヨウさんのような気さくな面は今も憧れを抱くなぁ)
響子さんは姉分と同時に私の憧れている内のひとりだけど、ヨウさんもまた私にとって憧れの人の内のひとりだったり。
さすがはチームのリーダーなだけあって、仲間への気遣い意識が高い。
初対面でも気さくに、律儀に、不似合いな事に人情的な面を持っているリーダーは私の憧れの人のひとり。
私もあんな風にさり気ない優しさを持てたら…、心の底から切望してしまう。
静かなBGMが流れる館内の一角でぼんやりと思い出に浸っていたら、こつんっとおでこに何かが当たった。
あ、冷たい。
ハッと我に返った私はまっさらな巨大スクリーンから目を放して顔を上げる。
そこにはジュースとポップコーンを持ったケイさんのあどけない姿。
「隙ありなんだぜ」
笑顔でカップジュースを手渡してくるケイさんと、あの時缶コーラを手渡してくれたヨウさんの姿が重なった。
何だか、やることなすこと本当に似てるなぁ、この舎兄弟。
微笑を零しながら、私はカップに入ったジュースを受け取ってお礼を言った。
「待たせた?」
ケイさんは私の隣にゆっくりと腰を掛けて、気遣いを見せてきてくれる。
ケイさんって結構人の空気を読むのが得意なタイプだから、私がぼんやりと待っていたことに薄々勘付いたみたい。
だけど私は待ちくたびれてぼんやりとしていたわけじゃなく、懐古の念を抱いていたからぼんやりしていたわけで。
私は首を横に振って彼に一笑した。
「ちょっと思い出に浸ってました。響子さん達と出逢った頃のこと。
私、響子さんとはすんなりと喋れたんですけど…、ヨウさん達とは全然喋れなかったなぁって。弥生ちゃんとも最初は全然駄目で。
今では良い思い出です。
まだ一年も経ってないですけど」
でも三年も前のような気がする。
私の言葉にケイさんは同調を示してくれた。