青騒-I SAY LOVE-


「あ、ケイさん。そういえばパンフレット代…、というかパンフレットは?」


「ああ、それなら、それなら? あっれー? ねえーぞ? あっれれー?
……ゲッ、俺、パンフレット何処に置いてきたんだ。確か先にパンフを買って…、っ、ば、売店かも! ちょ、見てくるから!」
 


「やっべぇ。失敗こいた!」素早く立ち上がったと思ったら、一目散に駆け出すケイさん。

「アウッチ! すんません!」

段差に躓き、危うく他のお客さんにぶつかりそうになりながら、相手に平謝りしながら、慌てて駆けるケイさんはちょっとカッコ悪いけれど、なんだか可愛らしく見える。ご愛嬌だよね、こういうのって。

おっちょこちょいなケイさんも私には可愛く見える。
これは重症かな? 私。
  
きっとケイさん、私のためにジュースとポップコーンのことで頭いっぱいになって、パンフレットのこと忘れちゃったんだろうなぁ。


どうしよう、すっごく愛されてる感じがする。
 
  
「はぁ…っ。こ、ココロ、お待ちどーさま。
ははっ、やっちまった。売店に置きっぱ…っ、ダッセェなもう」
 
 
ケイさんはすぐに戻って来た。 

ちょっと息を切らしながら、買ったパンフレットを私に見せてくる。

「ウッカりんこ」

ワタルさんの口調を真似っこしながら、頬を掻いて苦笑い。その子供らしい仕草に、微笑ましさと愛しさを抱く。



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