青騒-I SAY LOVE-
◇
「あー…こんちは。俺、田山圭太。
一応、いちおうヨウの舎弟で、ケイって呼ばれていて…あー…そんでー」
―――…しどろもどろ自己紹介をしてくれる私達の前に現れたヨウさんの舎弟さん・田山圭太さんはお話の通り、とっても大人しそうな、控えめな人。
風紀の乱れが一つとしてない彼はこっちが親近感を覚えるくらい、大人しそうな日陰っ子でした。
何一つ目立たない、と言ったら失礼かもしれないけれど、ホント、何処にでもいそうなフツーの男の子。
どうもどうも、と自己紹介をしてはペコペコ頭を下げるケイさんは自己紹介中、ちょっとだけ乱れた息を整えている。
というのも、三階フロアに舎兄とやって来た彼は、来たと同時にモトさんに歓迎ならぬ喧嘩を売られてしまい危うく怪我を負いそうになった。
最悪な大歓迎のやり方に響子さんの方がキレて、ケイさんを助けたんだけれど、彼は喧嘩を売られたことに随分心臓を鳴らしてるみたい。
大きく息をついて気持ちを落ち着かせようとしていた。
気持ちはすっごく分かる。
三階フロアに来るだけでも並々ならぬ勇気が必要なのに…、まさか初対面でこんな目に遭うなんて…、私の時とは全然違う歓迎の仕方に、思わずケイさんに同情してしまう。
大丈夫かな、帰りたくなったんじゃないかな、ケイさん。
しかもケイさん、モトさんに「オレは認めねぇええええからなー!」って罵声を浴びせられて…、折角の自己紹介が中断。
モトさんの放つ罵詈讒謗(ばりざんぼう)が彼に向かって飛び交う。
でもケイさんは物の見事にその罵声を、引き攣り笑いで受け流していた。
す、凄い。
私だったらハートが砕けているところなのに、ケイさん、引き攣ってはいるけど笑みで聞き流している!
「ホンットアンタ普通で弱そう! 何でアンタみたいな奴がヨウさんの舎弟なんだ?!」
「(ウルセェな! どうせ俺は普通日陰男子だよ! 殆ど喧嘩とか無縁だった弱そうな平凡男子だよ! 普通で悪いかコノヤロー! あと好き好んで舎弟になったわけなじゃないぜバッキャロー! 出来ることなら今すぐ返上してやりたいぜ、不良の舎弟なんざな!)はは…仰るとおりで」